長年「安全帯」と呼ばれてきた高所作業の命綱は、法改正により「墜落制止用器具」に変わりました。名前だけでなく規格も変わっており、旧規格の製品は2022年1月2日以降、使用禁止です(2026年7月22日時点)。この記事では、墜落制止用器具の種類と、買い替えが必要なタイミングを整理します。
「安全帯」から「墜落制止用器具」へ——法改正の要点
労働安全衛生法令の改正で、法令上の名称が「安全帯」から「墜落制止用器具」に改められました。ポイントは名称よりも中身です。
- 墜落制止用器具として認められるのは「フルハーネス型」と、一定条件下での「胴ベルト型(一本つり)」のみ
- 従来のU字つり(柱上安全帯など)は、単体では墜落制止用器具として使用不可(作業姿勢を保つワークポジショニング用の位置づけになり、フルハーネス等との併用が必要)
- 旧規格品(ラベルに「安全帯の規格」とあるもの)は2022年1月2日以降、全面使用禁止
制度の全体像は、当店の解説シリーズで詳しくまとめています。
墜落制止用器具の種類
フルハーネス型(原則はこれ)
肩・腿・胴をベルトで支える構造で、墜落時の衝撃を全身に分散し、宙づり時も安全な姿勢を保てます。高さ6.75mを超える場所では使用が義務(建設業では5mを超える場所での使用が推奨・原則)とされており、現在の高所作業の標準装備です。
胴ベルト型(一本つり)
腰の胴ベルト1本で支えるタイプ。フルハーネスが義務にならない高さ(6.75m以下)でのみ使用できます。墜落時の衝撃が腹部に集中するため、使える場面でもフルハーネスの着用がより安全です。
ランヤード(命綱)の種類も要チェック
器具本体と親綱・フックをつなぐランヤードには、作業する高さに応じたショックアブソーバ第一種・第二種の区分があります(腰より高い位置にフックを掛けるなら第一種、足元に掛けるなら第二種)。移動時に常に1本が掛かった状態を保てる2丁掛け(ツインランヤード)も、掛け替え時の墜落を防げるため広く使われています。選び方はこちらの記事でどうぞ。
>>【関連記事】ランヤード1種・2種の違いとは?フルハーネスの選び方も解説
買い替えのタイミング
次のどれかに当てはまったら、迷わず買い替えです。
- ラベルに「安全帯の規格」と書いてある……旧規格品なので使用禁止。今すぐ新規格品(「墜落制止用器具の規格」適合品)へ
- 一度でも墜落・落下の衝撃を受けた……外観が無事でも内部のショックアブソーバが機能済みの可能性があるため交換
- ベルトの擦り切れ・縫製のほつれ・金具の変形やサビ……毎日の点検で見つけたら使用中止
- メーカーの交換目安を超えた……ロープやストラップは消耗品です。使用開始日を記録して管理しましょう
新旧規格の見分け方は、こちらで写真付きに解説しています。
>>【関連記事】フルハーネスの旧規格・新規格の違いと見分け方|買い替え時期も解説
毎日の使用前点検を習慣に
買い替え判断のベースになるのが日々の点検です。作業前に次の4点をサッと確認するだけで、劣化の見落としを大きく減らせます。
- ベルト全体……擦り切れ・切り傷・薬品や塗料の付着・ひどい色あせ(紫外線劣化のサイン)がないか
- 縫製部……ほつれ・糸切れがないか
- 金具・フック……変形・サビ・ガタつきがないか、フックの外れ止めが確実に動くか
- ショックアブソーバ……カバーの破れや伸び切った形跡がないか
ひとつでも引っかかったら、その日の使用は中止して交換を。命を預ける道具に「たぶん大丈夫」はありません。
よくある質問
柱上安全帯(U字つり)はもう使えないの?
U字つり単体を「墜落制止用器具」として使うことはできませんが、作業姿勢を保つワークポジショニング用具としては使えます。その場合も、墜落制止用のフルハーネス等との併用が必要です。電柱や鉄塔などの柱上作業をされる方は、装備構成の見直しをおすすめします。
旧規格品を予備として持っておくのはあり?
おすすめしません。現場に旧規格品があると、うっかり使用してしまう事故のもとです。ラベルを確認して旧規格品と分かったら、処分して新規格品に入れ替えるのが安全です。
>>【関連記事】安全帯の腰ベルトとは?正しい付け方とフルハーネスとの違い
>>【関連記事】柱上安全帯と一般的な安全帯って何がちがうの?
まとめ
墜落制止用器具は「落ちたときに命を守る最後の砦」です。旧規格の安全帯をまだ現場で見かけたら、それは法令違反であると同時に、守れるはずの命を危険にさらしている状態です。ラベルの確認から始めて、フルハーネスへの更新を進めてください。