高齢者は体温調節機能や暑さを感じる感覚が低下しているため、本人が「大丈夫」と思っているうちに熱中症が進行してしまうことがあります。熱中症で救急搬送される方のうち、高齢者が占める割合は例年もっとも高く、命に関わるケースも珍しくありません。離れて暮らす祖父母や同居する親の異変にいち早く気づくためにも、高齢者ならではの症状のサインと、家族が今日からできる対策を正しく理解しておきましょう。
この記事では、高齢者が熱中症になりやすい理由から、症状のセルフチェック方法、家族ができる7つの対策、発症してしまったときの応急処置までまとめてご紹介します。
高齢者が熱中症になりやすい理由は?

高齢者が熱中症になりやすいのには、さまざまな理由があります。たとえば、以下のようなものです。
- 暑さそのものを感じにくく、対策が遅れる
- 喉が渇いたという感覚が鈍くなっている
- 体内の水分量・筋肉量が若い頃より少なく、脱水が進みやすい
- トイレが近くなるのを気にして水分摂取を控える人が多い
- 「エアコンの風が苦手」「電気代がもったいない」とエアコンを使わない人が多い
- ほかの人に頼ることを嫌い、暑さを我慢してしまう
加えて、筋肉量の少なさやホルモンバランスの影響で、高齢の男性より女性のほうが熱中症になりやすい傾向もあります。理由を知っておくと、「なぜ本人は平気そうにしているのに危険なのか」が家族にも見えてきます。
熱中症の症状セルフチェック

熱中症の症状は軽いものから命に関わるものまで段階があります。高齢者は自分から不調を訴えないことが多いため、周囲が次のサインに気づけるかどうかが分かれ目です。
- 軽症:立ちくらみ、めまい、こむら返り、大量の汗
- 中等症:頭痛、吐き気、体がだるい、判断力の低下
- 重症:意識がもうろうとする、呼びかけへの反応が鈍い、けいれん、体が異常に熱い
「普段より言葉数が少ない」「返事のテンポが遅い」「顔が赤い、または逆に血の気が引いている」といった些細な変化も、高齢者にとっては熱中症のサインであることが多いです。重症のサインが一つでも見られたら、応急処置と並行してためらわずに救急車を呼んでください。
高齢者の熱中症対策|家族ができる7つのポイント

ここでは、高齢者の熱中症対策として家族が実践できるポイントを詳しくご紹介します。
①こまめな水分・塩分補給の徹底
まずは、熱中症対策の基本となるこまめな水分・塩分補給の徹底を促しましょう。高齢者は、先ほどご説明したとおり喉が渇いたという感覚が鈍く、トイレが近くなるのを気にして水分摂取を控える人が多いからです。
体内の保水力が低下している状態のため、脱水が進行しやすいぶん、意識的に水分・塩分摂取を促す必要があります。スポーツドリンクを飲んだり、塩飴をなめたりすることをすすめてみましょう。喉の渇きを感じてから飲むのではなく、時間を決めて「飲む習慣」にするのがポイントです。
②エアコンを賢く使う(室内でも油断しない)
高齢者は、エアコンの風が苦手、電気代がもったいないなどの理由で使用しない人が多いのもいけません。「室内にいるから安心」とは限らず、締め切った部屋では屋外より室温が上がっていることもあります。もはや、日本の夏はエアコンなしでは乗り切れない状態です。
まずは、エアコンの有用性をしっかりと説明し、命を守るために必ず使うように説得してください。リモコンの使い方をやさしく教えることも大切です。可能であれば温湿度計を部屋に置き、離れて暮らす家族もときどき室温設定をチェックして、適宜調整するとよいでしょう。
③涼しい服装・熱中症対策グッズの活用
高齢者の熱中症対策として、ゆったりとした涼しい服装や熱中症対策グッズの活用もよい方法です。たとえば、接触冷感素材や吸汗速乾素材は、夏でもサラッと涼しく快適に過ごせます。高齢者は洋服や下着の素材に綿100%を好む傾向がありますが、綿以外の素材も涼しく快適に過ごせることを教えてあげるとよいでしょう。
また、ネッククーラーやハンディファンなどの熱中症対策グッズの活用も同時におすすめすることで、暑い夏を涼しく乗り切ることができます。

④入浴時は脱衣所・浴室の温度差に注意
実は、お風呂も高齢者の熱中症が起こりやすい場所のひとつです。長湯で汗をかいて気づかないうちに脱水が進んだり、脱衣所と浴室の温度差で体に負担がかかったりします。入浴前後にコップ一杯の水分を摂る、長湯を避ける、脱衣所にも小さな暖房・換気で温度差を減らすといった工夫を家族から声かけしてあげましょう。
>>【関連記事】入浴介助の熱中症対策|今すぐできる涼しい方法とグッズ5選
⑤就寝中も油断しない(夜間の熱中症)
熱中症は日中だけでなく、寝ている間にも起こります。気づかないうちに室温が上がり、エアコンを切ったまま朝を迎えて体調を崩すケースは少なくありません。就寝時もエアコンのタイマーではなく一晩中つけっぱなしにする、扇風機と併用して室内の空気を循環させるといった対策が有効です。「もったいない」と嫌がる場合は、電気代よりも命のほうが大切であることを丁寧に伝えましょう。
⑥体調変化の観察と呼びかけの徹底
高齢者は、自分から体調不良を訴えないことがあります。そのため、体調不良を見抜くには、体調変化の観察と呼びかけを徹底してください。
熱中症になりかけている、もしくはすでに症状が進んでいる場合、普段より言葉が少ない、元気がないといった様子や、目つきがおかしいなど、何らかのサインを出しています。普段から周囲の人が観察し、体調変化を早期に発見できるようにしましょう。同居していない場合は、毎日決まった時間に電話やビデオ通話で声を聞くだけでも異変に気づきやすくなります。
発症後は速やかな応急処置と救急車の要請を
どんなに気を付けていても、何らかの理由で熱中症を発症するケースもあります。高齢者は症状の進行が早く、命を落とすリスクも高いため、熱中症を発症したら速やかな応急対応と救急車の要請を行いましょう。熱中症の応急処置については、以下を参考にしてください。
- 涼しい場所に移動させ、楽な姿勢を取らせる
- 服装が窮屈そうな場合は、本人に呼びかけつつボタンを外したりベルトを緩めたりする
- 深部体温を冷やす(首・脇・手首・鼠径部などの太い血管をアイスパックや冷たいペットボトルなどで冷やす)
- 経口補水液もしくはスポーツドリンクを少しずつ飲ませる
なお、すでに意識がもうろうとしている、自力で水分を飲めない、徐々に状態が悪化しているといった場合は、応急処置では不十分です。速やかに救急車を要請し、医療機関で処置してもらいましょう。
よくある質問
高齢者はなぜ熱中症になりやすいのですか?
暑さや喉の渇きを感じる感覚が鈍くなっていることに加え、体内の水分量が少ない、エアコンを使いたがらないといった理由が重なるためです。詳しくは「高齢者が熱中症になりやすい理由」をご覧ください。
室内にいれば熱中症にならないのですか?
いいえ、室内でも熱中症は起こります。締め切った部屋では屋外より室温が上がることもあるため、エアコンを適切に使い、温湿度計で室温を「見える化」することが大切です。
どんな症状が出たら救急車を呼ぶべきですか?
意識がもうろうとしている、呼びかけへの反応が鈍い、けいれんがある、自力で水分を飲めないといった症状が見られたら、様子を見ずにすぐ救急車を要請してください。
まとめ
高齢者は暑さや喉の渇きを感じにくいぶん、本人任せにせず、家族が積極的に対策をリードすることが大切です。水分・塩分補給、エアコンの活用、涼しい服装やグッズの取り入れ、入浴時・就寝時の注意、そして日々の体調観察。この記事でご紹介したポイントを一つずつ実践し、高齢者ならではの特徴を理解しておくことで、早期発見・早期対処につながり、大切な家族の命を守ることができます。
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