「熱中症対策なら、うちもそれなりにやっている」——そう思っていないでしょうか。実は2025年6月の法改正以降、労働基準監督署は本当に動いています。義務化からわずか3か月で、全国257もの事業所が是正勧告を受けました。もう他人事では済まされません。
この記事では、熱中症対策のどこが労基の指導対象になるのか、罰則の中身、そして労基に指摘されないために今すぐ押さえておくべきポイントを、実例つきで詳しく解説します。職場の労務担当者、現場監督の皆さんは、特に必見です。
職場の熱中症対策は罰則付きで義務化された

2025年6月1日、労働安全衛生規則の改正により、一定の条件を満たす職場での熱中症対策が罰則付きで義務化されました。対象になるのは、WBGT(暑さ指数)28以上、または気温31度以上の環境で、継続して1時間以上、あるいは1日あたり4時間を超える作業が見込まれる職場です。この条件に当てはまる場合、事業者には主に次の2点が義務付けられています。
- 熱中症の自覚症状や異変を報告できる体制の整備・周知
- 作業からの離脱・身体の冷却・医師の診察など、緊急時の対応手順の策定・周知
違反した場合の罰則は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(2026年8月時点の情報。詳しくは厚生労働省(労働局)の資料を参照ください)。今までのように「対策していなくても罰則はない」という時代ではなくなったと理解しておく必要があります。
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労働基準監督署は実際に指導している|是正勧告257事業所の実例

「本当に指導までされるのか」と半信半疑の方もいるかもしれません。しかし実際に、義務化から2025年8月までの3か月間だけで、全国の労働基準監督署が257事業所に是正勧告を出しています(NHK報道による)。対策が不十分だった事業所の多くは、報告体制や緊急対応手順そのものが整っていなかったケースとみられます。「そのうち整備すればいい」と後回しにできる段階ではなく、すでに現場レベルで確認が入っている、と捉えておきましょう。
職場での熱中症は安全配慮義務違反&労災になる?
職場の熱中症は、労基からの指導だけでなく、安全配慮義務違反や労災の問題にも直結します。ここで改めて整理しておきましょう。
安全配慮義務違反とは?
安全配慮義務違反とは、使用者が労働者の安全配慮義務を怠った状態のことです。使用者は、労働者の命と健康を守るために、労働時間や労働環境など、法律で定められた条件を守る義務があります。2025年6月からは、労働安全衛生規則の改正により、熱中症対策を怠った場合も安全配慮義務違反として判断されることになりました。
どんなケースで労災と認められる?
では、どんなケースで職場での熱中症が労災として認められるのでしょうか。具体的なポイントは、以下のとおりです。
- 高温下で規定時間以上の労働を強いられた
- 休憩を十分に与えられず、水分・塩分補給がままならなかった
- 労働が原因で熱中症になった(本人に起因する原因の場合は、原則として認められない)
さらに、労災として認められるためには、職場への報告および労基署からの認定が必要です。単に職場で熱中症になっただけでは、労災として認められないので注意しましょう。
「エアコンをつけてくれない」は労基に相談される?
現場では「エアコンをつけてくれない」「暑いのに我慢を強いられる」といった従業員からの声が、そのまま労基署への相談につながるケースも増えています。空調の有無だけで即座に法令違反になるわけではありませんが、前述のWBGT基準を超える環境で長時間作業をさせている場合は、報告体制や緊急対応手順が整っているかを問われることになります。従業員から相談や不満の声が上がった時点で、「対策済みです」と示せる記録・体制があるかどうかが、労基対応の分かれ目です。
>>【関連記事】エアコンなしでの熱中症対策の方法は?暑い夏を涼しく乗り切る方法!
労基に指摘されないための実践チェックポイント

ここでは、職場の熱中症対策で労基に指導されないために必要なことを、具体的にご紹介します。
対象となる作業条件を正しく把握する
まずは、自社の現場がそもそも義務化の対象になるかどうかを確認しましょう。WBGT28・気温31度以上、継続1時間または1日4時間超の作業という基準は、現場によって当てはまったり当てはまらなかったりします。基準ギリギリの現場ほど、判断を先延ばしにせず早めに確認しておくことが重要です。
報告体制・緊急時対応手順を整備して周知する
今回新たに義務化されたのは、①熱中症の自覚症状や異変を報告するための体制、②作業からの離脱・冷却・受診などの緊急時対応手順、この2点です。決めるだけでなく全従業員に周知し、いざという時に迷わず動ける状態にしておくことが求められます。
熱中症対策グッズで現場の負担を減らす
報告体制や手順を整えるのと同時に、現場の熱そのものを減らす工夫も欠かせません。ネッククーラーや冷感インナー、アイスベストといった熱中症対策グッズを取り入れれば、従業員の負担を実感として減らせます。

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きちんと周知・実施しているか定期的にチェックする
職場の熱中症対策は、とかく最初だけしっかりやって放置されることが多く見られます。しかし、熱中症対策は継続して徹底されるべきです。従業員の当事者意識が薄まらないよう、きちんと周知・実施しているか定期的にチェックしてください。
>>【関連記事】熱中症対策の計画書を作成する方法!職場で盛り込むべきポイント!
労務担当者と現場責任者がしっかり連携して進める
労務担当者と現場責任者がしっかり連携して進めることも、重要なポイントです。労務担当者と現場責任者のコミュニケーションがスムーズな職場は、熱中症対策が格段に進めやすくなります。反対に、ここがうまくいかないと、熱中症対策でやるべきことが従業員になかなか浸透しないので注意しましょう。
>>【関連記事】熱中症対策責任者の役割とは?主な業務について解説
まとめ
今回は、職場の熱中症対策で労働基準監督署に指摘されないためのポイントをテーマに解説してきました。2025年6月の法改正以降、対策の不備は実際に指導・是正勧告の対象になっています。まずは自社の現場が義務化の対象かどうかを確認し、報告体制・緊急対応手順の整備から着手しましょう。
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>>【関連記事】熱中症対策の義務化にともなう「暑さ手当て」とは?概要について解説
また、熱中症対策に必要な設備・備品の導入には、国や自治体の補助金・助成金が活用できる場合があります。コストを抑えて対策を整えたい方は、あわせて確認しておきましょう。
